こころのしじまにて

ここに来るたびに

真っ白なこころになれる。

そして少しだけなつかしく、

泣きたくもなる。

 

あの頃と何も変わらないで

すべてを受け止めてくれる場所。

 

何度か引っ越して少しずつ遠くなってしまっても、

1年にいちど、もどってきてしまう。

 

何も考えずに、ただ歩く。

ここで一旦リセットしたあとに、

自然と浮かんでくるものが、

いちばん素直な感情だと知っているから。

 

 

そこは生まれ育った街のすぐ隣、

大きな池を囲むようにして緑が連なっている。

 

ここを歩くときだけ

世界が美しく見えた。

 

どんな迷いや苦しみさえ

忘れされてくれるくらいに

ただ風がやさしかった。

 

ここでいつも聞いた音楽のいくつかは、

人生の友になった。

 

誰に理解されることもないと

思いつづけた十代だったから

この場所とひとりの時間、

そして音楽だけを、

ただ愛した。

 

 

 

 

と思っていた。

一人の人物を思い出すまで。

 

 

 

 

彼は同じ中学の一学年先輩だったが、

ある時から完全にタメで話す仲だった。

 

最終的に地元で友だちと呼べるのは

奴だけだった。

 

奴は明るく優秀で万能、おもしろく人気者で

男女問わず友だちも多く、

何より変わり者だった。

 

ただの根暗だったわたしを、

彼が対等にひとりの人間として

大事にしてくれるところが好きだった。

 

高校、大学と違う道を進んでも

時たま連絡をとるのは奴だけだった。

 

夜中に突然電話が鳴り

なぜか急遽会うことになり、

コンビニで酒を買い込み

チャリ2ケツで向かったのは、

いつもこの公園だった。

 

明け方まで話が絶えることなどなかった。

 

何でも話せる、

という人間がこの人生でいたとすれば

まさしく奴のことだった。

 

そして、

ポジティブでスリリングでぶっとんでいて

そんなところが、

わたしにとって魅力的な奴が

超絶ネガティブな面や弱さを

時折ふと見せる瞬間が

なんかうれしくもあった。

 

奴が新卒で入ったウルトラブラック企業を

2ヶ月くらいで辞めて戻ってきて、

しばらく家の布団で

天井だけを見つめ続けるだけの生活を経た後、

バイトしまくって貯めた資金で

単身インドに渡り、

しばらく何かしてから帰国した時に会ったのが

最後だったように思う。

 

その後、

奴はまともな会社に就職して再び東京に行き、

遠い存在になって久しい。

 

わたしが

いろいろあって弱っていた時に

連絡をくれていたことも知っていた

けど、

返せなかった。

 

もしかしてもう

彼は変わってしまって、

あの時の奴ではないかもしれない。

 

もし

再会するようなことがあっても、

あの頃と同じようには

話せないのかもしれない。

 

もともと優秀だったので、

今頃バリバリのビジネスマンだろう。

 

 

 

わたしのことも、

 

 

酔った勢いで明け方に

二人で田んぼに侵入して

泥だらけになったり

 

なんてことも、

 

 

 

 

覚えていなくても

不思議ではない。

 

 

 

ぶっとんだ奴だから、

 

とにかく生きてさえいてくれ、と

 

こちらからは祈るだけだ。

 

 

 

あぁ、

こんなことが書きたかったのだろうか。

 

今年もこの場所に

もどってきて、

つい思い出してしまうことのひとつ

だったりする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください